相澤は握っている陽茉莉の手を持ち上げると、甲にキスをする。言葉はなくても、愛していると言われている気がして、胸にむずがゆさが広がる。

「そういえば……」

 陽茉莉はふと思い出す。
「礼也さんのお父さんにはご挨拶しなくていいのでしょうか?」
「俺の父親? ……しなくて大丈夫だ」

 答えるまでに少し間があり、おやっと思った。

(もしかして、礼也さんはお父さんに結婚のこと話していないのかな?)

 陽茉莉の怪訝な表情から考えていることを悟ったのか、相澤は慌てたように弁解する。

「親父には俺から話してある」
「私にはお父さんを紹介してくれないんですか?」

 陽茉莉はちょっと残念に感じ、相澤を見上げる。