「なんか、ごめんなさい。騒がしくて……」

 陽茉莉は皐月の後ろ姿を見送ってから、隣に座る相澤に謝罪する。

「いや、いいよ。陽茉莉がこういう温かい家庭で育ったってわかって嬉しいし」

 相澤はまったく気分を害している様子はなく、むしろ楽しげだ。

 そのとき、「そうだわっ」と母親が立ち上がる。

「どうしたの?」

 なんとなく嫌な予感がして、陽茉莉は母親に声をかける。

「相澤さんにね、陽茉莉の小さな頃の写真を見せてあげようと思ったの」
「しゃ、写真!?」

 想定外のことに、陽茉莉は素っ頓狂(すっとんきょう)な声をあげる。

(なんという余計なことを!)