「陽茉莉がこんな素敵な人を連れてくるなんてねえ」

 上機嫌で、先ほどからずっと同じ台詞を繰り返しているのは陽茉莉の母親だ。男っ気がまったくなかった娘が初めて『紹介したい男性がいる』と言うからどんな人なのかと不安半分だったが、実際に会った相澤はそんな不安をすっかり払拭(ふっしょく)してくれたようだ。終始にこにことしている。

 父親は長女である陽茉莉を嫁がせるということに対して心中複雑なようで、母親のような上機嫌ではなかった。けれど、どうやらろくでもない男に引っかかったわけではないということは確信できたようで、ほっとした様子だ。

 玄関のほうからドタバタと足音がする。

「あー、お姉ちゃんの彼氏? うわー、かっこいい!」

 外から帰ってきたのは、陽茉莉の一番下の妹である皐月(さつき)だ。四人兄弟なこともあり、一番上の陽茉莉と末っ子の皐月は歳が離れている。皐月はまだ中学生だ。

「こら、皐月! きちんとご挨拶しなさい」