「手土産は福星(ふくほし)の和菓子にしようと思っているんだ。どうかな?」
「福星ですか。いいと思います! うちの両親は高級和菓子なんて滅多に食べないから、喜びますよ」

 福星は老舗高級和菓子店で、繊細な意匠(いしょう)の練り切りや最中(もなか)などが有名だ。とても美味しいのだけれどひとつ数百円するので、特別な日でないとなかなか口にすることはない。

 陽茉莉が笑顔で同意すると、相澤は「よかった」とほっとしたように表情を緩める。

(あれ?)

 陽茉莉はその様子を見て、おやっと思った。いつもと少し違うように感じたのだ。

「……礼也さん、もしかして少し緊張しています?」
「そりゃあね。大丈夫だとは思っているけれど、万が一『娘はやらない』って言われたら大変だから」