以前は恋人もいないのにヨーロッパのお城に行きたいだとか、オーストラリアでコアラを抱っこしたいだとか、モルディブで水上コテージに泊まってみたいだとか色々と空想したものだ。けれど、いざ行くとなるとどこがいいかと迷ってしまう。

「礼也さんは行きたいところないんですか?」
「そうだな、陽茉莉とゆっくりいちゃいちゃできるところがいいな」
「なっ!」

 途端に真っ赤になった陽茉莉を見て、相澤はくくっと肩を揺らす。どうやらからかわれたようだ。

 家に着くと、陽茉莉は早速牛乳を冷蔵庫にしまう。落としたけれど角が少し凹んだだけで済んだのでほっとした。

「そういえば、明日なんだけど──」

 キッチンにいる陽茉莉のもとに相澤が近づいてきて、声をかける。

「明日?」

 明日は土曜日なので、ふたりで陽茉莉の両親に結婚の報告をしに行く予定なのだ。