「へえ、使ってみようか」
「はい。世界の温泉シリーズらしいですよ」
「世界の温泉? 日本の温泉ならよく見かけるけど、世界の温泉は珍しいな」
「チェコのカルロヴィ・ヴァリだそうです」
「世界的に有名な温泉地だな。行ったことがないから、本当にそこの温泉と似ているのか判断できないのが残念だ」

 相澤は少し肩を竦める。

「私も行ったことないです。チェコは綺麗な町並みのイメージがあるから、いつか行ってみたいな」
「行く?」
「え?」

 まるで近所の公園に行こうと誘われているかのような軽いノリに、陽茉莉は驚いて相澤を見返す。

「新婚旅行。行き先決めてないだろ? 陽茉莉の行きたいところでいいよ。どこがいい?」

(新婚旅行……)