(パンと牛乳とハムと……)

 コンビニに到着した陽茉莉は朝食に使う食材を買い物カゴへと入れてゆく。お会計を済ませて店の外に出ると、夜の冷たい風が頬を撫でた。

(よし。さっさと帰ろう)

 マンションに向かって陽茉莉は歩き始める。そのとき、「ヒヒッ」と嫌な声が聞こえてきた。

(今の、邪鬼の声? 札を……)

 鞄から札を出そうとしてサーッと血の気が引くのを感じた。

(鞄、置いてきちゃった……)

 邪鬼を(はら)うためには祓除(ばつじょ)札と呼ばれる特別なお札を使う。陽茉莉はその祓除札を作ることができる数少ない祓除師のひとりだった。邪鬼から襲われやすい陽茉莉を守ってくれる相澤の役に立ちたくて、自ら望んで祓除師になった。