「あ、礼也さん。お帰りなさい」

　キッチンとリビングをつなぐカウンターのほうを見ると、相澤がいた。陽茉莉は気付かなかったけれど少し前に帰ってきていたようで、すでに私服に着替えている。

　相澤はキッチンに入ってくると、斜め後ろから陽茉莉の手元を覗き込む。

「いい匂いだね」
「はい。煮込みハンバーグにしてみました。きのこたっぷりです。礼也さん、好きですよね？」
「うん。楽しみ」

　相澤は陽茉莉を包み込むように、背後から抱きしめる。

　ある程度煮詰まってくると適宜かき混ぜないとソースが焦げてしまうのだが、相澤のことが気になってしまい、つい手が止まってしまう。顎に手が添えられると強引に後ろを向かされ、唇を塞(ふさ)がれた。

「れ、礼也さん。悠翔君がいます」