『最後の日記』BIRTHDAY~君の声~

 私と孝次の付き合いは順調だった。
 遊んでばかりだった訳ではなく、学年が上がるにつれ講義やゼミは専門的なものになり、将来の職業に直結することを具体的に考えねばならない時期に来ていた。

 私は孝次との映画デートの帰りに見かけた高齢のご夫婦のことをきっかけに、高齢者福祉の道に進みたいと思うようになり……ホームヘルパーの資格を取ってアルバイトを始めた。

 そして、デイサービスに行く前の準備や帰宅後の身体介護が必要な方の担当になり……色々とデイの話を聞いているうちに、卒業後にデイ職員になりたいと思うようになった。
 出来れば色々な方の心の支えになれるようなデイの相談員に……

 大学4年生になって本格的に就職活動が始まると、大学に貼り出された求人の少なさやパソコンで検索して出てくる求人情報の条件や現実の厳しさに直面した。

 色々な面接を受けた結果、私は幸いにも電車で通える範囲にある大手系列デイサービスの生活相談員の内定を貰うことができた。
 そして、同時進行で勉強を続けていた社会福祉士の試験にも合格し、大学も無事に卒業して晴れて4月から大規模デイサービスの生活相談員として働くことになった。

 孝次はというと、私と正反対で大学受験の時は全部の大学に合格したほど頭がいいのだが、やる気になるまで時間がかかるというか、いわゆる夏休みの宿題を後回しにするタイプで……
 就職活動を始めたのが遅かったため、就職が決まらないまま卒業を迎えてしまった。

 実家から離れての一人暮らしがそのまま続けられるはずもなく……卒業と同時に東北の実家に帰ることになった。
 つまりは遠距離恋愛……

 私は将来のことを考えると不安で堪らなかった。
 新しい職場のことも、これからの二人のことも……
 寂しくて泣きそうになっていたら孝次から電話がかかってきた。

プルルルル
「もしもし? 春香?」
「明日実家に帰るよ……色々ありがとな」
「……私達……これで終わりなの?」
「バーカ、そんなことある訳ないだろ! 俺がどんだけお前を好きだと思ってんだよ!」
「だって……」
「結婚しような?……俺達……お前がボケた婆さんになっても面倒見てやるよ」
「まだ就職も決まってないくせに…………でも……ありがと」

 私は自分の部屋で、昔一緒に見た映画の『秘密』のBGMが流れる中、無責任すぎる仮のプロポーズをされた。

 そして新しい職場での出会いは、私に様々な爪痕をもたらし……その行く末である事実に気付くことになるのだった。