ケアマネ事務所に異動する前に勤めていた系列デイサービスの前に、桜がたくさん咲く都立公園があった。

 お花見の時期には公園内の大通りに毎年出店も出ていたので、わりと有名なお花見スポットになっていた。
 年々出店の数も増えて、定番の粉ものだけでなく様々なご当地グルメ、ヨーヨーや人形すくいのお店もあって、子供やお年寄りまで色んな人で賑わっていた。

 デイサービスの方に勤めていた頃は、たまにこの公園に来ることがあった。
 春以外にも利用者さんとお散歩をしたり、売店のメロンパンを買ってみんなで食べたり……  
 私は、この公園に来るのが好きだった。

 今年の桜は特に綺麗だったので、デイサービスとケアマネ事務所の職員みんなでお花見をすることになった。

 風に舞う花びらのピンクと空の青さは、表現しきれない程美しくて、景色だけで泣けてくる気がした。
 私は太陽に手を伸ばしながら、空を見上げて言った。

「私、この公園の桜が好きなんだ~また一緒に見れるといいねっ……約束だよ?」

 私はなぜか、これが最後のお花見になると分かっていた。

 彼が代表で飲み物などを買ってくることになったが、桜に見とれてうっかりしていたら私だけ頼みそびれてしまった。

(ジンジャーエール……飲みたかったな……)

「お前はどうせこれだろ?」

 ボーッとしていた私の頬に突然、ジュースをぶっきらぼうに当ててくる。

「わ~コレが飲みたかったのありがとう~~~っでもお前って言うなー!」

 兄弟喧嘩のようなやり取りをして周りに笑われるのが楽しかった。

 笑っている間は、このまま彼といる時間がずっと続くような気がしていた……
 あの時までは……