『最後の日記』BIRTHDAY~君の声~

 ある日、仕事の伝達で彼女にどうしても電話をしなくてはいけなくなった。
 昔から電話はどうも苦手だ。
 しかもよりによって彼女に……
 この間、思い出すだけでも恥ずかしいセリフを思いがけず彼女に言ってしまったものだから更に気まずい。
(しかも後から考えたら色々ヤバいこと言っちゃったし……絶対引いてるよな)

プルルルル プルルルル
「もしもし?(……ック)  どうしたの?(……ック)」
「また泣いてんの?」
「なんで分かるかなぁ…………実は旦那とケンカしてドアに穴開いて……たぶん仕事で疲れてたんだと思う」
「映画のこと?」
「違う、あのことは悠希くんにしか言ってない」
「……もう別れれば?」
「バカ」

 その時、電話をかけている僕の後ろで「ヒュー…………ドーン!! パチパチパチ」と花火の音がした。
「……今の何?」
「あ~秋祭りの花火の音」
「え~いいな~私お祭りや花火大好きなの! どこでやってるの?」
「うちの近所」
「私も行きたい!!」
「来た頃にはもう終わってるよ」
「え~行きたかったな……じゃあ今度やる時は事前に教えてね!  約束だよっ」

 次の週明け、なんとなく職場で「この間、仕事で春香に電話したら泣いててさ~」と、みんなに暴露してやった。
「なんでばらすの?」と恥ずかしがる彼女を「もう離婚だな」とからかうのが妙に楽しかった。
 ただ親父がひやかしで「別れたら結婚してくれるって」と彼女と僕に言ってきて焦った。
 彼女が慌てて何か言っていたが、動揺し過ぎて分からなかった。
(反応に困るからやめてくれ)