それからまた一年が過ぎ、春。
東見の屋敷に新しい風が吹く。
そう。春は死の季節であると同時に、誕生の季節でもある。
「ふぎゃ、ふぎゃ~」
ふたりがいつも並んで座る縁側に、赤子の泣き声が響き渡る。
飾り棚の上で惰眠をむさぼっていた私も、そこではっと目を覚ます。
スヤスヤ眠っていたはずなのに、唐突に叫び出した我が子に、雪為も初音もオロオロするばかりだ。
命姫を得た雪為は、本来持っていた強靭な生命力を取り戻していた。顔の色艶もよく、男前に磨きがかかっている。
「成匡はなぜ泣くんだ? なにか不快か」
「お乳はさっき飲んだばかりだし、どうしたんでしょう」
すっかり弱りきっているふたりに、私は助け船を出してやることにした。
立派な名をもらった赤子の前にストンとおり立ち、コロコロ転がったり尻尾を振ってみせたりする。
興味を引かれた成匡はぴたりと泣き止み、私の姿を凝視している。
「おぉ、ネコのおかげだ。助かった」
「成匡は猫ちゃんが好きなんですね! 覚えておこう」
すっかりご機嫌になった成匡を腕に抱き、初音は柔らかな母の笑みを見せる。
東見の屋敷に新しい風が吹く。
そう。春は死の季節であると同時に、誕生の季節でもある。
「ふぎゃ、ふぎゃ~」
ふたりがいつも並んで座る縁側に、赤子の泣き声が響き渡る。
飾り棚の上で惰眠をむさぼっていた私も、そこではっと目を覚ます。
スヤスヤ眠っていたはずなのに、唐突に叫び出した我が子に、雪為も初音もオロオロするばかりだ。
命姫を得た雪為は、本来持っていた強靭な生命力を取り戻していた。顔の色艶もよく、男前に磨きがかかっている。
「成匡はなぜ泣くんだ? なにか不快か」
「お乳はさっき飲んだばかりだし、どうしたんでしょう」
すっかり弱りきっているふたりに、私は助け船を出してやることにした。
立派な名をもらった赤子の前にストンとおり立ち、コロコロ転がったり尻尾を振ってみせたりする。
興味を引かれた成匡はぴたりと泣き止み、私の姿を凝視している。
「おぉ、ネコのおかげだ。助かった」
「成匡は猫ちゃんが好きなんですね! 覚えておこう」
すっかりご機嫌になった成匡を腕に抱き、初音は柔らかな母の笑みを見せる。