「そうじゃないよ! 私、どこにも行かない……!」
慌てたように返事をする水戸さん。
「どこにも……っ」
そのあとに一度言葉に詰まらせる。
水戸さんの余命は、あと半年。
それをまだみんなは知らない。
水戸さんは、泣かない。
ぐっと涙を堪える。
「だからね、これからも……私と、仲良くしてくれると嬉しい……です」
水戸さんは、泣きそうな顔をして笑った。
陽だまりのような明るさで。
「そんなの、当たり前じゃん……! みんな小春ちゃんのこと大好きだから」
水戸さんの元へ駆け寄ると、彼女へ抱きついた。
その反動で、僕と繋がれていた手は解けた。
「おいっ、牧野、どーいうことだよ!」
代わりに僕には、釘崎くんを含め男子が集まってくる。
高校生になって初めて僕が中心にいた。
水戸さんも、僕も、みんな笑顔で。
──たとえこれが限られた命の、一瞬の恋になったとしても、僕は絶対に後悔はしない。
これは、僕と、きみの期限付きの儚い恋。
- Fin ー