「水戸さんのことを友達として支えたいと思ったから、誰よりも」
水戸さんの一番になれなくても、友人として支えることができたなら、それだけで僕は満足だった。
「でも、ほんとは友達だけじゃなくて……」
けれど、自分の気持ちに気づいてしまったら見て見ぬフリはできなくて、気づかないフリはできなくて。
「好きになったから、水戸さんのこと」
──これは、間違いなく僕の初恋で。
「……へ」
僕の言葉に分かりやすく動揺して、固まる水戸さん。
それでも僕の口は止まらない。
「好きな人のことを支えてあげたいって思うのは、当たり前なことだから」
ただのクラスメイトだった僕たち。
いつのまにか僕の中で、彼女の存在が大きくなっていた。
「好きな人のために、僕ができるのは……これくらいしかないから……」
恥ずかしいとか、そんなのどうでもよくて。
今、目の前にいる水戸さんにちゃんと伝えたい。
──後悔してからじゃ遅いから。
「……日和くん……」
もちろんこれは僕の一方的な感情で、それが交わることは、この先きっとない。
「ご、ごめん、こんなときに……でも、べつに返事がほしいとかじゃなくて……迷惑なのは分かってるんだけど、聞いてほしかったというか」
我に返ると、少し照れくさくて目を下げる。
「ううん、迷惑なんかじゃない……迷惑って思うはずがない」
水戸さんの震える声が聞こえて、恐る恐る顔をあげると、
「日和くんの気持ちすごく……嬉しい……」
涙を流す水戸さんが視界に移り込んだ。
「嬉しいけど、その気持ちに応える資格が私にはない……」
「資格?」
「だって私、半年しか生きられないから、今それに応えちゃったら日和くんを傷つけることになっちゃう……」
──もしかして、自分がいなくなったあとのことを言っているのかな。
もちろん僕も、未来のことを考えるとすごくつらい。
水戸さんがいない人生なんて考えたくない。
これからも水戸さんといろんなことをして過ごして、思い出を作りたい。
「それって……僕と両想いって、こと?」
聞かずにはいられなかった。
そうしたらきみは、泣き顔を堪えるように顔を上げた。
何も言わない。
けれど、それが肯定しているようで。
「……僕、水戸さんを失いたくない」
彼女の小さな手のひらを、きゅっと大切に包み込む。
「ずっと水戸さんと一緒にいたい。これからもずっとずっと」
そばにいたい。
それがたとえ、叶わないことだとしても。
どうしても口にしてしまうのは、願ってしまうんだ。
──彼女がいる、未来を。
「日和くんに思ってもらえたら、きっと未来は幸せだろうなぁ」
おもむろに言葉を紡いだ彼女の瞳の奥には、遠い遠い未来が描かれている。
「うん、絶対……幸せにする」
「絶対?」
「うん」
「じゃあ約束だね」
雨上がりに晴れて虹が現れたような、そんな表情を浮かべる彼女。
「うん、約束」
薬指を絡めて、未来を願った。
僕も、水戸さんも、心は繋がっているんだと信じた。