「もう少し僕に探させてくれないかな!」
「え、でも、毎日放課後探すの大変でしょ」
「ううん、全然!」

 大変なんかじゃない。

 むしろ、これは必ず見つけ出したい。

「ここまできたらなんとしても見つけたいから」

 ──四つ葉のクローバーを探し出すことができたら、水戸さんの病気が治るんじゃないかって。

 そんな期待をしてしまう。
 願ってしまう。

「じゃあ私ももう少し頑張る」
「でも、水戸さんあまり無理しない方が……」
「今日はすごく調子がいいの。だから大丈夫」

 陽だまりのような笑顔を浮かべる。

 まるで、病気など患っていないようなほどに元気だ。

「心配してくれてありがとう、日和くん」
「え……ええ?」
「ここまで私たち仲良くなれたのに牧野くんって名字で呼ぶなんてそっけないでしょ? だから日和くんって呼びたいんだけど、ダメ……かな」

 真っ赤な顔をさせて、俯く水戸さん。

 夕焼け色のオレンジが、あたり一面を温かく染める。

 そんなの、ダメじゃない。

 むしろ僕にとってそれはご褒美みたいなもので。

「……呼んでくれると、嬉しいです」

 僕の心は素直だった。

 ──ああ、顔がすごく熱い……

「日和くん顔、真っ赤」

 いつのまにか顔を上げていた水戸さん。

 けれど、それは。

「み、水戸さんこそ……」
「じゃあ……これは夕焼けのせいにしよっか」
「そ、そうだね」

 これは、夕焼けのせい。

 それからしばらく二人とも顔を赤くさせたまま、ぎこちない雰囲気で四つ葉のクローバーを探した。