「うん。私が今、やりたいこと書き出してみたの。でもほんとはね、もっとたくさんあったの。だけどそれを全部書き出してやろうとすると、きっと時間が足りない」

 まるでそれは自分がいなくなることを予感しているようで。

「足りないって、だからそれは……」

 生きることを諦めないでほしいと言葉を紡ごうとすると、

「──でも私、まだ諦めてないよ」

 今度は期待に満ち溢れているような言葉が落ちるから、「え」僕は理解が追いつかなくなる。

「牧野くんの気持ちを無駄にはしない」

 自分の人生に悲観していることを言ってみたり、希望を持ってみたり。彼女の言葉が目まぐるしい。まるでルーレットのように切り替わる。

「絶対に諦めないから、私のやりたいこと一緒に手伝ってくれないかな」

 そう告げられて、僕の答えは一択だ。

「うん、もちろん」

 だって僕から言い出したことだから。

「よかった」

 と、笑った水戸さん。

 その笑顔を見て、心が温かくなる。

 誰かに必要とされたことが初めてで、不思議な気持ちが心に充満する。

 そわそわして落ち着かない。それなのにぽかぽかと温かくて。

 まるで心の中が満たされるようで。

 この世界に絶望していることがあった僕は、水戸さんによって救われた。

 なんてこと、きっときみは知らない。