「え、ちょ……」
待って、待ってくれ。
病気であまり長くは生きられなくて……それがあと半年?
突然すぎる言葉に、理解が追いつかなくなる。
「驚かせてごめんね。でも、牧野くんにはなんだかバレちゃいそうで……これ以上は隠せそうになかった」
木に背もたれて、苦しそうに笑顔を浮かべる水戸さんは、いつも見ている表情とは別人で。
「ほんとに、ごめんね……」
いつも明るくて優しくて、みんなを照らす陽だまりのような水戸さん。彼女の周りにはたくさんの人が溢れかえって、僕はそんなきみの笑顔を見ているとホッとしてしまう。
自分なんかが恐れ多いと思って声をかけられなかったのに、彼女はなんの躊躇いもなく僕に声をかけてくれた。
人目も気にせずに。
けれど、この現実は簡単に受け入れられそうになくて。
水戸さんに何も言えずにいると、
「おーい、小春ちゃーん」
おもむろに声が聞こえる。
木の影から覗き込むと、そこにいたのはクラスメイトだった。
おそらく水戸さんを探しているのだろう。
「……みんな、私のこと探してるんだ」
それに気がついた水戸さん。
立ち上がろうとするから、
「なっ、何してるの……!」
小声で彼女を静止する。
「みんなの、ところに、戻るの」
「だ、だからってその身体じゃ……」
「このまま隠れてたらみんな心配しちゃう。それに病気のことも気づかれるかもしれない」
水戸さんの瞳は、怯えているみたいだった。
〝病気〟を知られることが彼女は、一番嫌みたいだ。
「で、でも……」
その身体じゃとてもじゃないけれど。
「大丈夫……私、まだちゃんと生きてるから」
僕ではなく。
まるで自分に言い聞かせるような言葉を呟いたあと、
「それに、さっきよりは……大丈夫だから」
木についていた手を胸の前に移動させると、ぎゅっと握りしめて。それから息を整えると、グッと唇に力を入れて。
「みんな、ごめん! 私……うとうとしちゃってたみたい」
いつものような笑顔と、明るさを浮かべてみんなの元へ向かった。
そうしたら、水戸さんに気づいたクラスメイトは、「もーっ、小春ちゃん探しちゃったじゃん」「ほんとだよ、もう!」みんな笑顔になって彼女を取り囲む。
数秒前の彼女とは、対照的で。
「水戸さん……」
僕は、たまらなく苦しくなった。
それと同時に、苦しいのに無理して笑う水戸さんの後ろ姿は、とても強くたくましく見えたんだ──。