冷蔵庫の中には、半額シールが貼られた賞味期限切れの鶏肉に卵。野菜室には玉ねぎがあった。

「ただいまー……って、え!修斗が夕ご飯作ってくれてるの!?」

 夫婦が揃って帰宅をしたのは、夕方5時。

「うん。母さん最近、平日は仕事で忙しいし、土日も父さんの店手伝ってて大変かなーと思って」
「うっそ。信じられない!修斗が親子丼作れるなんて!」
「スマホの言いなりだけどね」
「嬉しいー!ありがとう!」

 きゃあきゃあと喜ぶ母の傍で、上着を椅子にかける父。目も合わない、学校へ問い合わせたことも言わない。部活に行かず何をしているんだ、とも聞いてこない。昔ならば、こんなことなかったのに。

「父さん……」

 父は、父としての自信や貫禄を失い傷付いているのかもしれない。これからの未来にも不安を抱えている。

「なんだ」

 だから俺、父さんの笑顔を見るためなら決心がつきそうだよ。

「父さんの分は肉多めに盛るから、全部食べてよ?」

 おたまでピシッと父を指してそう言うと、彼は穏やかに笑っていた。

「ああ、ありがとうな」