翌日の日曜日。久しぶりにバッシュと再会した足は、案の定早くそこから出たがった。
「もー、いってぇなぁ……」
中川原が体育館に来るまでのランニング。早速きつい、痛い、辛いのオンパレードで嫌になる。
「修斗大丈夫か?足まだ痛いの?」
爽やかな顔をして走る哲也の隣、俺の顔はまるで般若。開始直後でこの状態では、意味ある過酷なトレーニングもただの鞭打ちとなってしまう。
速度を落とし、俺は言う。
「哲也悪い。俺、今日もやっぱ帰るわ」
爽やかから一転、気分を害したであろう哲也は俺の肩をグイと押してコースから外すと、自身も列を抜けて叫ぶ。
「ごめん学武!あと10周したらいつものメニューやっといて!」
学武の「おう」で俺を体育館の外へと連れ出した。
ポケットに手を突っ込んで、哲也が聞く。
「どうした修斗、お前新人戦終わってから変だぞ」
彼のこんなざらざらとした表情は、初めて見るかもしれない。また嫌な風が吹いてきて、俺の内でざわわと居座る。
「黙ってんなよ。なんか言えよ」
これは話し合いであり喧嘩ではないが、今にも似たものにはなりそうだと感じた。
「俺にも言えねぇ感じ?」
黙りこくれば黙りこくるほど、不穏な空気が漂っていく。
相手は哲也。最強の仲間であり最高の大親友。悔しい時も楽しい時も、辛い時も嬉しい時もいつだって隣にいたあの哲也だ。真那花に言えたのだから、きっと彼にも言えるだろう。
「おい修斗ってば!」
恥じらいも躊躇いも捨てればいい。哲也はこんなことで俺を軽蔑する奴ではないし、むしろ俺の気持ちに寄り添ってくれる奴だと知っている。
もう言おう、打ち明けよう。嘘などついてごめんと、素直に謝ればいいだけだ。
多少の緊張感を抱きつつ、哲也を真っ直ぐ見つめた時、彼は鋭い槍を投げてきた。
「まさか、また万引きじゃねぇよなぁ?」
犯罪者を見る目と視線がかち合って、たじろいだ。太々しいその態度は、友達にとるものではない。
何も返せずにいると、哲也が続けた。
「真那花からあの時聞いたよ。つっても無理矢理吐かせたに近かったけど。顧問が修斗を試合に出さない理由が、どうしても気になってな」
今は一体、何の時間だろうか。
「真那花は修斗はそんな人じゃないって言ってたけど、万引きって1回すると癖になるとかいうし。お前、明らかに変だし普通じゃないし」
一瞬にして容疑者へと変化した俺に、尋問でもする時間なのだろうか。
「新人戦で負けた腹いせに盗みでもしたのか?何かとったのか?」
親友に盗人だと思われ絶望すれば、無意識に後退った俺の足。
「おい、どこ行くんだよ」
お願いだから、そんな冷酷な目で見ないで欲しい。俺と哲也の間には、絶対的な絆があったはずなのに。
「おい!修斗!」
逃げ去る俺の背後から、大好きな親友の悲痛に帯びた声がした。
「もー、いってぇなぁ……」
中川原が体育館に来るまでのランニング。早速きつい、痛い、辛いのオンパレードで嫌になる。
「修斗大丈夫か?足まだ痛いの?」
爽やかな顔をして走る哲也の隣、俺の顔はまるで般若。開始直後でこの状態では、意味ある過酷なトレーニングもただの鞭打ちとなってしまう。
速度を落とし、俺は言う。
「哲也悪い。俺、今日もやっぱ帰るわ」
爽やかから一転、気分を害したであろう哲也は俺の肩をグイと押してコースから外すと、自身も列を抜けて叫ぶ。
「ごめん学武!あと10周したらいつものメニューやっといて!」
学武の「おう」で俺を体育館の外へと連れ出した。
ポケットに手を突っ込んで、哲也が聞く。
「どうした修斗、お前新人戦終わってから変だぞ」
彼のこんなざらざらとした表情は、初めて見るかもしれない。また嫌な風が吹いてきて、俺の内でざわわと居座る。
「黙ってんなよ。なんか言えよ」
これは話し合いであり喧嘩ではないが、今にも似たものにはなりそうだと感じた。
「俺にも言えねぇ感じ?」
黙りこくれば黙りこくるほど、不穏な空気が漂っていく。
相手は哲也。最強の仲間であり最高の大親友。悔しい時も楽しい時も、辛い時も嬉しい時もいつだって隣にいたあの哲也だ。真那花に言えたのだから、きっと彼にも言えるだろう。
「おい修斗ってば!」
恥じらいも躊躇いも捨てればいい。哲也はこんなことで俺を軽蔑する奴ではないし、むしろ俺の気持ちに寄り添ってくれる奴だと知っている。
もう言おう、打ち明けよう。嘘などついてごめんと、素直に謝ればいいだけだ。
多少の緊張感を抱きつつ、哲也を真っ直ぐ見つめた時、彼は鋭い槍を投げてきた。
「まさか、また万引きじゃねぇよなぁ?」
犯罪者を見る目と視線がかち合って、たじろいだ。太々しいその態度は、友達にとるものではない。
何も返せずにいると、哲也が続けた。
「真那花からあの時聞いたよ。つっても無理矢理吐かせたに近かったけど。顧問が修斗を試合に出さない理由が、どうしても気になってな」
今は一体、何の時間だろうか。
「真那花は修斗はそんな人じゃないって言ってたけど、万引きって1回すると癖になるとかいうし。お前、明らかに変だし普通じゃないし」
一瞬にして容疑者へと変化した俺に、尋問でもする時間なのだろうか。
「新人戦で負けた腹いせに盗みでもしたのか?何かとったのか?」
親友に盗人だと思われ絶望すれば、無意識に後退った俺の足。
「おい、どこ行くんだよ」
お願いだから、そんな冷酷な目で見ないで欲しい。俺と哲也の間には、絶対的な絆があったはずなのに。
「おい!修斗!」
逃げ去る俺の背後から、大好きな親友の悲痛に帯びた声がした。