己の心で描いた神様は俺を叱らないのに、どうしてだか真那花は怒ってきた。

「ちょっと修斗。なんで部活行かないの?」

 土曜日の夜、偶然鉢合わせたコンビニで。走るついでだろうがなんだろうが、俺はもうこのコンビニには立ち寄らないと決めた。

「真那花には関係ないよ、じゃあな」

 時刻はそんなに遅くない。人通りもまだあるし、今日は彼女を送らなくてもいいだろうと思ったからそう告げたのに。

「送って」

 今日は彼女の方から頼んできた。女の送って欲しいを断る男ほど、クズにはなりきれない。

「ついでだし、公園で話でもしようよ」

 なんのついでかもわからぬけれど、彼女に手を引かれるがまま、俺はベンチへ座らされた。


「やっぱりもう帰ろうぜ?さみい」

 ネックウォーマーに半分顔を(うず)めながら、俺は白い息を吐いた。俯けば目に入った自分の両足。この足は明日、窮屈なシューズに耐えられるだろうか。

「ねえ修斗」

 真那花に呼ばれ、顔を上げる。

「なに」
「私たちって、付き合ってるんだよね?」

 キスをしたあの日から彼女との関係がずっと曖昧なのは、確実に俺のせい。ここで冷たく突き放せば、彼女は哲也へ靡くのだろうか。

「付き合ってる?なんで」
「なんでって、なにそれ……」

 彼女は足元に転がっていた石をひとつ蹴った。

「付き合ってるなら、私には全部話して欲しいんだけど。例えば部活を休んでる理由とか」

 強い眼差しを寄越されて、少しだけ怯んだ。体裁を繕うために、前髪を掻き上げる。

「てかなんで部活行ってないこと知ってんだよ……」

 哲也から聞いたのだろうかと思ったけれど、ひょんな答えで返された。

「見てるから」
「え?」
「私、隣のクラスだけど修斗のこといつも見てる。だから最近、修斗がやたら急いで帰ってることも知ってる」

 その時キュッと、フロアではない何かを掴む音が胸の辺りから聞こえてきた。自分を正当化しながら、またひとつつく嘘。

「父さんの店、手伝ってるだけ」
「それは嘘」

 食い気味に否定され、ついついぎゃふんと言いかける。零れ出た(よだれ)を拭う俺の横、真那花は続けた。

「私、修斗のこといつも見てるって言ったでしょう?そんなフェイントする時の顔で言われても、信じられない」
「いや、ちょ、ちょっと待て」
「言ってよ、本当のこと」

 5年間毎日一緒にいる哲也だって騙せたのに、何故君はこんなにもあっさりと。

「ねえ修斗。部活に行かない理由は他にあるんでしょう?」

 あっさりと、意図も容易く俺からなんでもかんでもを吐き出させてしまうのだろうか。