「はぁ?修斗今日もバスケこねーの?」

 理由も知らせず3日間部活を休んだところで、哲也が嫌悪感を露わにした。

「に、日曜日は行くよ。中川原怒ってる?」
「怒ってるっつーか……」

 下校時刻の教室。哲也は自身の鞄をドンッと俺の机に置いてくる。

「なんで来ねえの?」

 なんで。その答えを俺は、用意していなかった。

「な、内緒っ」
「はぁ?無理」

 無理。それはそうだ。もし逆の立場ならば、俺は怒る。
 咄嗟に思いついた言い訳は、そこら辺の誰もが思いつくような家族の体調不調だった。

「ちょっと父さんが風邪ひいちゃってさ」
「え」
「今俺、家の店手伝ってんのよ」

 これならば、それ以上詮索されないと思った。案の如く、哲也はすんなり引き下がる。

「なら仕方ないな」

 ほっと胸を撫で下ろすと共に抱えた少しの罪悪感を丸め込むのは、こんな考え方。
 親友についた嘘と引き換えに手に入れるのは、バスケというスポーツをするにあたって命よりも大切なバスケットシューズ。これは、神様が許してくれる。

「親父さん、早く治るといいな」

 パンッと背中を叩いてきた哲也には、礼を言った。