「勝ったぁあ!!」

 驚くほど静かな崎蘭校のベンチに、流羽武校側の大喝采が響き渡る。異国にも思えるギャップだらけのその世界に、俺等が馴染むことは一生ない。
 18対96。オフィシャルテーブルに記されたその数字は、もう動かせない。

 相手と握手を交わし健闘を讃え合えば、次は応援席に向かって礼をするいつもの流れ。2階席を見上げれば、目元を拭う真那花を発見してしまった。

「あ、あり……」

 その瞬間込み上げてきた何か。言い慣れた日本語が、上手く出てこなくなる。

「ありが、あり……」
「修斗」

 俺の肩に手を乗せたのは哲也。潤んだ瞳の彼が、「無理すんな」と言ってくれた。

「ありがとうございましたぁ!」

 哲也の声を皮切りに、メンバー皆が復唱する。すると降り注ぐは、温かい拍手と労いの言葉たち。

「頑張ったね!」
「見事だったよー!」
「みんなカッコよかった!」

 悔しさと感謝が入り乱れ、涙がぽたぽた落ちていく。万全で挑めなかったこの試合。たとえ不調が一切なくとも結果は変わらなかったかもしれないけれど。

「う、うう……」

 期待したから、夢みていたから。関東、全国の景色を見られると思ったから心底泣けた。
 泣きじゃくる俺を、メンバー皆が包んでくれた。頬をつねり「笑え」なんてふざけてくるその仲間も泣いていて、俺等は皺くちゃな顔のまま、必死に笑った。

 千葉という看板を背負い関東大会に行くのは、流羽武校が相応しい。そう思えたのは、決勝戦を観戦し終えてからだった。