流羽武校は、俺より全員高身長。スターティングメンバーの中には190センチ台が3人もいた。

 試合開始のジャンプボールで、早々見せつけてくれたのは学武。最頂点へと達したボールに触れた相手と学武の手はどちらも1歩としてひかず、空中で止まっているようにも一瞬見えたが、判断が早かったのは学武だった。押してダメなら引いてみろ方式で返した手首が、そのまま俺にボールを送った。

 すぐさま速攻に持ち込もうとパスを構えたが、流羽武校の戻りは(まばた)きのスピード。さすがは決勝トーナメントだ。
 速攻を諦めた俺が指で作った「1」を掲げれば、4番 葛羅(かつら)と探り合いの時間が始まった。腰を低く落とした目の前の彼は、手で時折ボールを取りにくる仕草。
 俺の背後には、敵も味方も誰もいない。ここで葛羅にボールを奪われれば、そのまま走り去った彼に点を取られるだろう。
 パスか、シュートか。でも最初はやっぱりシュートがしたい。

「哲也!」

 真横に上がってきた哲也にパスを出した俺は、そのまま葛羅に背を向けて、じりじりゴールに向かって押して行く。

「哲也!」

 もう1度名を呼べば、戻ってきたボール。俺の後ろにはリングと葛羅、あとは知らない。
 右利きの俺は今大会、右手でゴールを決めることが多かった。そんなものはデータとして、流羽武校の輩には知れ渡ってしまっているのだろう。だから俺は左からのシュートを選択した。その前に1度だけ、右から攻める素振りだけは見せておいて。

「このっ……!」

 騙された葛羅は思惑通り右に移動。俺はそのまま左ドリブルからのシュート。ガゴンッとボードの角にあたれば、ボールは確実にネットを潜った。

「いいぞ!先制だ!」

 中川原が好む先制点。それは開始23秒のことだった。