「修っ斗ー!おっはよー!」

 今日も俺は、哲也の声で起こされる。ガララと窓を開ければ、冷たい風と彼の元気が部屋へと飛び込む。

「おはよ、哲也」
「うわ!今日はやけに素直!」
「だって決勝トーナメントだもん。朝から怒り狂って体力使ってる場合じゃねえ」
「お前も成長したなあ」

 屈託なく笑う哲也を見るといつも思う。彼には幸せになって欲しいと。


 決勝トーナメントの会場はアリーナ。収容人数もぐんと増え、応援席はコートを見下ろすかたちになる。体育館のギャラリーよりも遠い距離。勘助も、今日はそこに。

「みんな頑張ってくれよな!見守ってるぜ!」

 それでも彼は、満点スマイルでエールをくれる。たったの1秒だって戦いのフィールドに立てないその悔しさを、きっとどこかに隠しながら。だから俺も、瞬間抱えた侘しさを(おもて)に出さずこう言った。

「1位になって、焼肉行こうぜ!」


 応援席にはうちの母含めたメンバーそれぞれの家族の姿。息子の写真を引き伸ばし自作したうちわを持ってきていた真斗の両親は、その息子に本気で怒られていた。
 真那花は今日も来てくれた。「頑張って」と言ってくれた。
 キュッと足元を鳴らせば、そこから順にゾクゾクしていく。