同日、新人戦準々決勝。相手は津知北高校。前大会では決勝まで駒を進めたチームだ。
センターライン。相手の整列を待つ間に、哲也が聞いてきた。
「さっき、真那花とどこ行ってたん」
強い口調で、目も合わさない。
「ふたりきりでなにしてた」
嫉妬でしかないその横顔には、なんと返すのが正解なのだろうか。
「べ、べつになんもしてねぇよ。足見せろって言われて見せたら、赤いねーって」
「それで?」
「それだけ」
「ふうん」
そのふうんと同時に出ていったのは哲也の溜め息。彼がまだ真那花を愛しているのだと、またもや痛感させられた。
キュッ。キュッキュッ。
気持ちが浮こうが沈もうが、試合は始まる。俺がマークするのは津知北校4番隆宗。ドリブルをつきながら、彼が言う。
「花奏ってお前か。コーチが要注意人物だとか言ってたから楽しみにしてたんだよ」
彼にもしあだ名をつけるとしたら、イエローマン。ヘアバンドもリストバンドも黄色ならば頭も明るいし、ほくそ笑む口から覗く金色の前歯がキラリと光る。
姿勢を低く保ちながら、俺はカットのタイミングを見計らう。
「要注意でもどうでもいいが、お前の前歯どうにかなんねぇのかよ。眩しいっつの」
「しょうがねえだろ。知らん誰かと毎日どっかで喧嘩していりゃあ、こうなることもある」
「よく退部にならねぇな……」
「ははっ。俺は隠れてやるのがうまいから」
ダムダムダム。性格を表しているかのような、乱暴なドリブルだった。
そんな隆宗の黒目が動いた一瞬で、試合も動く。彼が放ったボールを止めた真斗が瞬時に学武へパスを送れば、わき立つ崎蘭校のベンチ。ゴールの下ではフリーの大林がボールを要求していた。学武はオーバーヘッドでそこへ送球、大林がそのまま2点を産み出した。
「くそ野郎が……」
イエローマンのミスから始まった出だしの展開。彼の拳は震えていた。
センターライン。相手の整列を待つ間に、哲也が聞いてきた。
「さっき、真那花とどこ行ってたん」
強い口調で、目も合わさない。
「ふたりきりでなにしてた」
嫉妬でしかないその横顔には、なんと返すのが正解なのだろうか。
「べ、べつになんもしてねぇよ。足見せろって言われて見せたら、赤いねーって」
「それで?」
「それだけ」
「ふうん」
そのふうんと同時に出ていったのは哲也の溜め息。彼がまだ真那花を愛しているのだと、またもや痛感させられた。
キュッ。キュッキュッ。
気持ちが浮こうが沈もうが、試合は始まる。俺がマークするのは津知北校4番隆宗。ドリブルをつきながら、彼が言う。
「花奏ってお前か。コーチが要注意人物だとか言ってたから楽しみにしてたんだよ」
彼にもしあだ名をつけるとしたら、イエローマン。ヘアバンドもリストバンドも黄色ならば頭も明るいし、ほくそ笑む口から覗く金色の前歯がキラリと光る。
姿勢を低く保ちながら、俺はカットのタイミングを見計らう。
「要注意でもどうでもいいが、お前の前歯どうにかなんねぇのかよ。眩しいっつの」
「しょうがねえだろ。知らん誰かと毎日どっかで喧嘩していりゃあ、こうなることもある」
「よく退部にならねぇな……」
「ははっ。俺は隠れてやるのがうまいから」
ダムダムダム。性格を表しているかのような、乱暴なドリブルだった。
そんな隆宗の黒目が動いた一瞬で、試合も動く。彼が放ったボールを止めた真斗が瞬時に学武へパスを送れば、わき立つ崎蘭校のベンチ。ゴールの下ではフリーの大林がボールを要求していた。学武はオーバーヘッドでそこへ送球、大林がそのまま2点を産み出した。
「くそ野郎が……」
イエローマンのミスから始まった出だしの展開。彼の拳は震えていた。