「みんな!もう無理に千田へ通すな!」

 36対41。同じ戦法で4点を取られた中嶋が焦り始める。

「自分で切り込め!」

 そんなキャプテンの指示に従順な栄枝校メンバーは、リングへ向かって猪突猛進。しかしドリブルで敵の隙間を縫い、自らシュートまで持っていく練習量は少なかったようで、結局最後には呼んでしまう彼の名前。

「せ、千田!」

 助けてと顔に書いてある時点で、バレバレだ。

「サンキュッ」

 パスのコースが読めれば、カットするまでもなくボールは自然と俺の手元へ。礼を言って、俺はそれで点を得る作業を繰り返した。
 試合終了のブザーが鳴り結果を見れば、いつの間にやら66対33のダブルスコア。

「桂樹、やったな!」

 俺が真っ先に駆け寄ったのは、途中出場で4番をマークした桂樹の元。おそらく終始緊張していたであろうけれど、彼はそんな気掛かりを忘れさせてくれるくらいに笑ってくれた。

「修斗こそ、やったじゃないか!」

 抱き合ったふたりから飛び散る汗は、宝石のように煌めいていた。