ガンッと会場に響くは、本日20本目となる千田のシュート。第2クオーター、28対41。崎蘭校のファウルで与えてしまったフリースロー以外は、全て千田の得点だ。

「ま、まじかよ……」

 守れど守れど、楽々頭上で行き交うボール。爪先までぴんと手を伸ばしても、(したた)かにフロアを蹴り上げても、全く歯が立たない。ワンパターンのオフェンスなのに、止められない。

「ちっ」

 哲也、学武、真斗、大林、そして俺の口からはそんな音。されるがままの俺等にとうとう中川原の堪忍袋の緒が切れた。

「なにやってる!さっきからずっと6番にやられてるぞ!」

 タイムアウトをとった彼は、鬼のような形相で俺等を叱る。千田のマークを務める学武は申し訳なさそうな顔をしていた。

「す、すみませんっ」
「井頭が無理なら小俣、お前が代われ!」

 学武の次に高身長な真斗を、千田のマークへ指名した中川原。指された真斗の瞳が歪む。

「え、俺っすか……」
「そうだ、6番につけ!」
「いや、でもそのっ」

 伊之瀬を抑えることで体力を消耗しているのに、真斗は学武のカバーにもたくさん入っていたから、相当ガソリン切れに見えた。今わりかし動けるのは哲也、大林、俺の3人だと思う。

「負けてるのは身長だけだ、実力はお前たちの方が上!そんなに難しい試合じゃないだろう!」

 彼の意見には納得だ。確かに難しい相手ではない。ただ身長差がありすぎる。モノレールのように次々とボールがリングへ運ばれていくさまを、指を咥え眺めないでいるのにはどうしたらいいものか。
 栄枝校の武器は巨人の千田。崎蘭校の武器は──

「コーチ」

 その答えがわかった時、俺は中川原を呼んだ。

「俺がつきます、6番に」
「はぁ?」

 目を丸くさせたのは、彼を含めた仲間全員。

「正気か?花奏と6番じゃ、20センチくらい身長差があるんだぞ」
「知ってます」
「そんなお前がどうやって……」
「でもスキルは俺の方が20段上です」

 その瞬間、中川原の目が見開いた。彼の瞳に映る俺は小さいけれど、やってやるぞという顔をしていた。

「6番を止める自信があります。俺にマークさせて下さい」

 流れを変える、雰囲気を一変させる。それが俺にはできる。
 腕を組み、中川原が言う。

「勝算が少しでもあるならば、それでいこう。しかし花奏がマークしていた相手の4番はどうする。そのまま井頭に引き継ぐか?」
「いえ。学武はポイントガードのマークに慣れていません。なので桂樹と交代させてください」

 いいよな、と学武に聞くと、彼はうんと頷いた。皆の視線が桂樹へ移る。

「しゅ、修斗っ。俺、4番なんてついたことないけど」
「大丈夫だよ。結局あっちは千田がいなきゃなにもできないんだから。その千田は俺が阻止するし」
「でもっ」
「大丈夫」

 バンッと一撃背中を叩けば、桂樹に俺の気合いが宿った。

「わかった、やってみるっ」

 そこで試合再開のブザーが鳴る。