「も、もしもし?」
「もしもし、修斗?」

 今の俺は辛いから、真那花の声を聞いただけでも涙が溢れる。

「どうしたの、電話なんか珍しいじゃん」

 でもそれを彼女に悟られたくはないから、声音(こわね)をコントロール。彼女の優しい声が届く。

「今日バスケの試合行ったの。修斗は気付いてなかったけど」
「ああ、さっき哲也から聞いたよ」
「初戦突破おめでとーって言いたくて、だから電話しちゃった」
「え……」
「おめでとう、修斗」

 べつにいいよ。応援くれば?

 そんな冷たい態度をとった俺に、わざわざ電話を寄越し祝ってくれる彼女に驚いた。

「明日も頑張ってね」

 こんな最低な奴、放っておけばいいのに。むしろ罵ってくれていいのに、どうして。

「ご、ごめ真那っ……」

 気丈に振る舞うのももう限界。言葉を詰まらせた俺は、嗚咽しか彼女に届けられぬ。

「修斗?」

 この前ごめんなって、明日も来てよって伝えたいのに。

「修斗、泣いてるの?」

 涙腺が、崩壊した。

 電線に止まっていたカラスがカアと鳴き、真那花は「外?」と聞いてきた。

「こ、公園」
「どこの?」
「東駅近くの、黄色いベンチの……」
「ああー、わかったかも」

 この時、期待してしまった自分はきっと。

「今から行く」

 愛しい人に逢いたくて、どうしようもなかったんだ。