昼飯を挟み、シード校だった相手を下す。スカッとした気分と共に、俺等は戦場を後にした。

「いってえ……」

 会場校の最寄駅。その痛みを感じたのは電車待ちのホーム。右足の小指が押し潰されるような、そんな違和感。

「なんか小指がいてぇ」

 そう呟くと、哲也が視線を落として言う。

「足の小指?走り過ぎか?」
「うーん、なんだろうなあ」
「爪が伸びてんじゃね?」

 あははと笑い飛ばす哲也は、気にも留めない様子だった。

「だと、いいけど」

 彼とはあべこべに俺が抱える不安要素。それは成長だ。背が1センチ高くなることは嬉しいが、足は1センチ大きくなった分だけ靴がいる。バスケットシューズはそれなりに値が張ると知っているから、手放しでは喜べない。
 借金、あとどのくらいあるんだろう。そんな思いが駆け巡る。

「そういえば今日、真那花来てたな」

 一方で、哲也が口にした爆弾発言。

「え、ええ!?」

 俺の声は裏返る。

「2試合目の応援席にいたじゃん。修斗気付かなかったの?」
「気付かんかった……」
「ふうん。いつもみたいにきゃあきゃあ言ってなかったけど、ずっと応援してくれてたぜー」

 真那花は一体誰を見にくんの?

 そう聞いて以来、彼女とは口をきいていない。

 べつにいいよ。応援くれば?

 そうぶっきらぼうに言い捨ててから、会話は皆無。
 どんどこと心臓にバチを打ち付けられながらも、普通の「へえ」を頑張り返した。