第4クオーター。太一の代わりにフィールドへと戻ったのは大林。ベンチでへこむ太一には「またやろうぜ」と拳をあてておいた。
 
 十神校のコーチは中川原よりも鬼だと俺が思ったのは、試合再開早々だった。ずっとメンバーチェンジもしなかった彼等5人に、オールコートのディフェンスを要求したのだから。

「う、はぁっ……」

 俺の目の前、苦しそうな兄には救急車でも呼んであげたくなる。

「兄貴、だ、大丈夫か?」
「う、うるせえ……」

 リストバンドで何度拭っても滴る汗。まあ、それは俺も然りだけど。

 さっきの哲也とのプレーで俺のテンションは鰻登り。親友含めた仲間たちとやるバスケはやっぱり最高だ。

 最終クオーター1分も経たぬうちに暴れた出したのは学武と真斗。身長を生かした巧みなプレーで互いに2点ずつ、計4点を決めてくれた。
 第3クオーター丸々休息をとれた大林は今日1番動きが良い。工藤へのパスをカットして、そのボールをネットに潜らせていた。
 そんな中、哲也はどうかと言うと。

「ちっきしょっ……!」

 シュートをしようと飛んだジャンプのタイミングを弟に見極められた彼は、いい加減なパスを背後に放る。

 真後ろなんて誰もいねえよ、そんなボール、そのまま場外に出ちまうだろうが。

 そう思うのがボールを投げてからだったら遅かったと思う。
 哲也は俺を見た。シュートは無理だと諦めたその刹那、俺の目を。そしてその黒目が俺を通り越し彼の背後に向けられたから、俺は賭けたんだ。
 キュッとフロアを掴んで離し、哲也の裏へと向かって走る。逆さにしたUの字で落ちてきたボールは、ことんと優しく俺の手へ。

「だから、さっきからテメェらのパスはなんなんだよ!」

 ゴールとは真逆へ向かうボールに、弟の混乱が伝わった。

 50対43。残り4秒。リードしているからこそ、俺はゴールから離れてみた。入れば3点、外せばゼロ点。入る自信が俺にはあった。

「おっしゃああああ!!」

 試合終了を告げるブザーよりも前に雄叫びを上げたのは崎蘭メンバー。ガクッと項垂れるのは十神校の皆。握手を交わし、兄は言う。
 
「最後はなにも出来なかった。完敗だ」
「完敗でも完勝でもねぇよ。ただすんげえ楽しかった。ありがとう」
「おう。俺も楽しかった」

 ふっと微笑み合えば、もう友だ。