阿吽の呼吸というやつを、切り札でもなしに自然と使う峰山兄弟。
再びノールックで兄から出されたパスをキャッチした弟に崎蘭校のメンバーが引き寄せられると、今度はリングに目を向けながら兄へと返すボール。シュート体勢の兄だが、もう彼の何を信じていいのかわからない。
このままゴールを狙うのが最善な気もするが、ゴール近くの弟に引き寄せられたせいで、リングの真下は崎蘭校の輩で溢れている。万が一外しでもしたら、十神校がリバウンドで勝てる可能性は低いだろう。同点に迫る中、ここは確実に決めたいはず。
だとしたら、俺だとしたら相手の弱点をついて──
はっとしたのは、十神校から見た俺等の弱点がわかってしまったから。俺は唇を震わせたままの彼へ叫ぶ。
「太一!工藤にくるぞ!」
その言葉にほくそ笑んだのは目の前の兄。しかし彼は俺に行動を読まれたと知った上でも、工藤の元へとボールを送った。
スリーポイントよりも内側。けれど試合前の中川原の話を聞いていれば、その位置から工藤は放たない。
「そいつは下がるぞ!」
半歩下がればプラス1点。ならば工藤は必ず下がる。だって彼は遠くからのシュートが得意だから。
ただ手を掲げただけの太一を嘲笑うかのように、工藤はバックステップ。己のディフェンスを遠ざけた分、フォームはより華麗に堂々と。ボールがリングに吸い込まれていくさまが瞳に映り、俺は足元のコートを蹴った。
「ご、ごめんみんな!」
謝罪の言葉を口にする太一の心をなんとか平常に戻してあげたいと思うけれど、平常心を保てない今の俺がどう振る舞えばいいのかわからず歯痒くなるだけ。
42対43。第3クオーター残り時間は15秒。
再びノールックで兄から出されたパスをキャッチした弟に崎蘭校のメンバーが引き寄せられると、今度はリングに目を向けながら兄へと返すボール。シュート体勢の兄だが、もう彼の何を信じていいのかわからない。
このままゴールを狙うのが最善な気もするが、ゴール近くの弟に引き寄せられたせいで、リングの真下は崎蘭校の輩で溢れている。万が一外しでもしたら、十神校がリバウンドで勝てる可能性は低いだろう。同点に迫る中、ここは確実に決めたいはず。
だとしたら、俺だとしたら相手の弱点をついて──
はっとしたのは、十神校から見た俺等の弱点がわかってしまったから。俺は唇を震わせたままの彼へ叫ぶ。
「太一!工藤にくるぞ!」
その言葉にほくそ笑んだのは目の前の兄。しかし彼は俺に行動を読まれたと知った上でも、工藤の元へとボールを送った。
スリーポイントよりも内側。けれど試合前の中川原の話を聞いていれば、その位置から工藤は放たない。
「そいつは下がるぞ!」
半歩下がればプラス1点。ならば工藤は必ず下がる。だって彼は遠くからのシュートが得意だから。
ただ手を掲げただけの太一を嘲笑うかのように、工藤はバックステップ。己のディフェンスを遠ざけた分、フォームはより華麗に堂々と。ボールがリングに吸い込まれていくさまが瞳に映り、俺は足元のコートを蹴った。
「ご、ごめんみんな!」
謝罪の言葉を口にする太一の心をなんとか平常に戻してあげたいと思うけれど、平常心を保てない今の俺がどう振る舞えばいいのかわからず歯痒くなるだけ。
42対43。第3クオーター残り時間は15秒。