俺は味方5人の中で1番元気な、太一を使おうと思った。

「太一!」

 俺からパスを受け取ると、彼と8番工藤との1対1が始まった。

「へい!太一パス!」

 ゴール下、フリーになった真斗が叫ぶがそこにパスは送られない。何かしらの考えがあり、太一はそうしているのだろうか。
 右手から左手、左手から右手へとボールを漂わせる時間が暫し続いた。俺が気にするのはあのルール。大嫌いな24秒縛り。

「太一!パス!」

 ならば俺がパスを貰おうと走るけれど、兄がぴったりと纏わりついてきて疲れるだけ。だけどそれは言い訳にならない。スタミナなんぞなくても気合いでいく。

「太一!」

 太一の背中を通れば、手渡しで貰えた汗ばんだボール。

「修斗、あと2秒!」

 哲也の焦った声が届くけれど、シュートまで運ぶには厳しかった。

「24秒バイオレーション!」

 試行錯誤しやっと手に入れたボールなのに、審判は意図も簡単に奪っていく。空っぽな手の平をぐぐっと握って、太一の側に駆け寄った。

「太一、次次っ」

 彼の唇が、またもや震えていた。