ゲーム開始のジャンプボール。宙高く(はじ)かれたボールをゲットしたのは十神校。4番峰山兄の胸元にそれが収まる。

「くそっ!」

 彼にパスが来ると知っていた上で阻止出来なかった俺はフラストレーションが溜まる。ゴールと彼の間に入り、睨みを利かせる。
 兄の片割れの弟は俺の後方。キュッキュッと哲也のバッシュの音がするから居場所がわかった。
 パスか、ここからのシュートか。ドリブルで抜かれる自信なんか俺にはないから、兄が選べるのはこの2択のみ。

「しつけえ!」

 粘りを帯びた俺のディフェンスで前へ進めない兄は、1度サイドへステップを切ると、スリーポイントラインの真上で飛んだ。投げやりに見えたそのシュートに俺はすぐさまリバウンドの構え。しかしそれは間違った選択だった。

「哲也!弟へのパスだ!」

 兄は(はな)からリングなど狙っていなかった。リングが備え付けられた、バックボードが的だった。
 ゴンッとそこで跳ね返ったボールが計算されたように弟の元へ落ちると、彼はそれをしれっと受け取っていた。哲也も素早く反応するが、パスだと知っていた人間の方が動きは速い。スパッとすんなりシュートが決まり、十神校のベンチがわき立つ。
 試合開始僅か25秒。阿吽の呼吸というやつに、2点を奪われた。