クリスマスと正月を終えれば間近に迫る新人戦。今日は試合前最後の部活動。部員を円く集めた中川原が言う。

「今日の練習はここまで!今夜中に疲れをとって、明日は万全で挑むぞ!」

 今日も今日とて競走馬よりも走らせておいてよく言えるな、と哲也と目配せだけで笑い合った。

「3年がいなくなってから初めての公式戦だ。今年の崎蘭は去年よりも強いって、そう思わせてやろうじゃないか!」

 ユニフォームはすでに頂戴した。俺は4番、哲也は5番で、勘助はベンチ入りしなかった。
 皆を見渡し、言葉を続ける中川原。

「初戦はいきなりだが、去年の大会で関東まで駒を進めたチーム、十神(とおがみ)高校だ。キーパーソンは4番5番の双子、峰山(みねやま)兄弟。花奏と斉藤にマークさせようと思っている」

 名を呼ばれた俺等ふたりは「はい」と忠実な返事をする。中川原は不敵な笑みを浮かべていた。

「双子は生まれた時から一緒だ。阿吽(あうん)の呼吸なんてもんじゃない。だがお前たちなら抑えられるな?」

 顔を見合わせる哲也と俺。うんと頷けば揃う声。

「「余裕っす」」