「哲也!この問題教えてくれ!」

 12月初旬、期末テスト期間。この1週間はどこの部活も全て休み。普段の俺は茶色いボールしか追いかけていないのだから、こんな休みをいきなり与えられたところで何をすればいいのかわからない。
 哲也の自室。椅子をくるりと回して振り向く彼は呆れ顔。

「おい修斗。毎回テスト前になると放課後俺んち来るのやめろよ。こっちの勉強が進まん」
「じゃあ俺が留年してもいいのかよ!」
「そしたらバスケもう1年できんじゃん」
「あ、そっか」

 あほか、と投げられむすっと膨れる。うなじをぽりぽり掻きながら、哲也は気怠そうに言う。

「なにがわかんねーんだよ」
「全部」
「あほか」
「てかなんで哲也は余裕なんだよ。お前も毎日バスケバスケしてんのに」
「へへ、修斗と違って朝型だからじゃね?」
「あ、そういえば知ってるか?担任の(はる)ちゃん先生、赤ん坊できたらしいぜ」
「え、まじ?」
「まじまじ」
「絶対可愛いの産まれんじゃん」

 バッシュを履けないこの1週間も、哲也といればあっという間に過ぎていく。