23対22の接戦。
 途中、我を失った木本が俺にしたファウルのお陰で、崎蘭校は1点のリードを保ちながらハーフタイムへ突入した。椅子へ座り、荒れた呼吸を整える。

「大丈夫か、修斗っ」

 うちわで俺を扇ぐ哲也がそう聞いてくれたが、バテバテの俺はそんな彼に小さな笑顔さえも作れなかった。
 中川原が、俺等の前でしゃがみ込む。

「相手は1点ビハインドだ。後半もこのままベストメンバーでくるだろう。甲斐田っ」
「はいっ」
「どうだ。お前の目から見て、変更した方がいい仲間はいるか?」

 その言葉で、甲斐田先輩は椅子にもたれかかる4人を見渡した。疲弊真っ只中の俺と目が合って、もしかしたら、と名前を呼ばれる覚悟をした。

「南原、お前辛いだろ」

 しかし甲斐田先輩が口にしたのは他者の名前。南原先輩は俯いた。

「南原のマークマン、けっこう手強いな。お前が得意な角度のシュートも、今日は全然じゃないか」

 鼻を啜る南原先輩。思い通りにいかぬプレーばかりだったのか、歯痒い思いが滲み出る。

「すまん、甲斐田……」
「謝ることじゃない、少し休め。渡辺いけるか?」

 すでにTシャツを脱ぎ捨てていた渡辺先輩は、ふくらはぎを伸ばし準備運動中。彼も甲斐田先輩と同じく、前半の南原先輩の動きで何かを悟っていたのかもしれない。

「もちろんだ。南原、後は任せろ」

 指でポキポキ奏でながら、首もコキッと1回鳴らす。言葉で伝えずとも互いの気持ちが分かり合える。チーム競技のここが、俺は好きだ。