鼻歌を奏でる月仲校の部員を見送れば、後片付けの時間。

「修斗っ」

 パイプ椅子を両脇に4脚ずつ抱えた俺のもとに、2脚しか持っていない哲也がやってきた。

「もっと持てよお前」
「うるせぇ、疲れてんだよ」
「ご苦労さん」
「勝った時は疲れなんてどっか行っちまうのになー。負けると疲労がひかん」

 最終クオーターが終わりスコアを見れば、25対63。やはり横井は強かった。

「修斗、顧問に謝ったの?」
「おう。さっきな」
「どうだった?許してくれた?」
「いや、なんか拍子抜けするほどあっさりだったわ」
「ははっ、結局そんなもんだよ。修斗いねーとこのザマだもん」

 後輩といい、哲也といい、仲間は俺を責めはしない。

「なあ哲也」

 パイプ椅子を地面に下ろし、俺はやにわに立ち止まる。

「ごめんな」

 丁寧に頭を下げた俺を見て、笑うは哲也。

「はあ?なにが?」
「練習全然行かなくて。っていうか今日も出られなくて」
「気にすんな、そんな時もあんだろ。これからまた修斗とバスケできんならそれでいーよ」

 その時俺が見たのは、太陽みたいな彼の笑顔。そして俺はこう思った。
 高校行ってもこいつとバスケがしたいな、俺にはこいつが必要だなって。
 だから俺は、哲也を崎蘭高校に誘った。すんなりと頷いた彼は、「じゃあ真那花も誘おうかな」と言っていた。
 3人揃って合格をした時は、ジュースで延々と宴をした。