扉を開けた先、眩い朝陽と彼女の姿。胸がドクンと1度、強く打つ。
「ま、真那花……なんで俺んち知って……」
「哲ちゃんから聞いた!」
「え、あ、そうなんだ……」
三角の目をした彼女はどこか御冠。寝起きの俺へ畳み掛けてくる。
「さっき体育館行ったよ!バスケ部の練習試合だっていうから、準備手伝いに!」
「はぁ、そりゃどうも」
「なのになんで部員の修斗がいないのよ!」
その時俺の手元へバゴンッと投げられたのは、シューズケース。学校のロッカーへ常備してある、俺のバスケットシューズ。キャッチし損ねたそれは床へと落ちた。強い目つきの真那花に俺は言う。
「なんでって、この前言ったじゃん。行けねえんだって」
「はあ!?試合に出られないから!?」
「いや、まあ……」
それだけが理由じゃない気もするけど。
「なんつーかな……」
どうして俺は、部活にも試合にも行かないのだろうか。仲間だけが活き活きとプレーする姿を見るのが辛い?
「顧問にも、来なくていいって言われたし」
真那花の前、シューズケースを拾うふりして情けない顔を隠す。彼女の声が降ってくる。
「なんで来んなって言われてんのよっ」
「だって、まん……」
「はあ?まん?」
真那花に教えるつもりはなかった。けれど口が滑るとはこのことだ。
「万引きしたから」
「万引きぃ?」
「本屋でちょっとなー。メンバーは誰も知らないから、内緒で頼む」
そう言うと、途端に流れた沈黙が不穏な空気を漂わせる。シューズケースを手に立ち上がれば、先ほどよりも怖い顔した真那花と目が合った。
「じゃあそれって、修斗が悪いんじゃん」
そんなこと、言われなくてもわかっている。
「ああそうだよ。俺が悪い」
先週のことなのに、俺はまたもや説教を食らうのか。はあっと吐いた息で不快を知らしめるが、彼女には通じない。
「じゃあなんで被害者面してるの?」
鋭い視線で、訴えかけてくる。
「顧問に来るなって言われたとか、行けないからとか。なんで全部他のせいにしてるの?本当に今辛くて不安でどうしようもないのは、バスケ部のメンバーみんなでしょう!?」
瞬間息が詰まったのは、仲間の顔が浮かんだから。
「修斗が誰よりもバスケ上手いの知ってるよ、学校中の噂だよ!そんな絶対的エースの修斗がいない中でメンバーは試合しなきゃならないんだよ!?それがどんなに心許ないか、プレッシャーか、わからないの!?哲ちゃんだって修斗のせいで、最近全然元気ないよ!」
真那花が出場するはずだった体操部の大会には、個人戦と団体戦があった。彼女はおそらくそのふたつを欠場した。エースの真那花がいない中で行われた団体戦は、どうなったのだろう。
「真那花、お前もしかして……」
「メンバーにそんな思いさせといて、被害者ぶらないでよ!」
バスケは至極当然、チームプレー。俺が今行かないことは、俺だけの後悔だけでは済まされない。
シューズケースを真那花に差し出すと、彼女は受け取りながらも戸惑った。
「え……?」
俺はうーんと伸びをする。
「真那花サンキュ。なんか色々気付かされたわ。ちょっとこれ持って待ってて。今すぐ準備してくる」
俺の気変わりに、彼女はその名の通り、花みたく笑っていた。
「ま、真那花……なんで俺んち知って……」
「哲ちゃんから聞いた!」
「え、あ、そうなんだ……」
三角の目をした彼女はどこか御冠。寝起きの俺へ畳み掛けてくる。
「さっき体育館行ったよ!バスケ部の練習試合だっていうから、準備手伝いに!」
「はぁ、そりゃどうも」
「なのになんで部員の修斗がいないのよ!」
その時俺の手元へバゴンッと投げられたのは、シューズケース。学校のロッカーへ常備してある、俺のバスケットシューズ。キャッチし損ねたそれは床へと落ちた。強い目つきの真那花に俺は言う。
「なんでって、この前言ったじゃん。行けねえんだって」
「はあ!?試合に出られないから!?」
「いや、まあ……」
それだけが理由じゃない気もするけど。
「なんつーかな……」
どうして俺は、部活にも試合にも行かないのだろうか。仲間だけが活き活きとプレーする姿を見るのが辛い?
「顧問にも、来なくていいって言われたし」
真那花の前、シューズケースを拾うふりして情けない顔を隠す。彼女の声が降ってくる。
「なんで来んなって言われてんのよっ」
「だって、まん……」
「はあ?まん?」
真那花に教えるつもりはなかった。けれど口が滑るとはこのことだ。
「万引きしたから」
「万引きぃ?」
「本屋でちょっとなー。メンバーは誰も知らないから、内緒で頼む」
そう言うと、途端に流れた沈黙が不穏な空気を漂わせる。シューズケースを手に立ち上がれば、先ほどよりも怖い顔した真那花と目が合った。
「じゃあそれって、修斗が悪いんじゃん」
そんなこと、言われなくてもわかっている。
「ああそうだよ。俺が悪い」
先週のことなのに、俺はまたもや説教を食らうのか。はあっと吐いた息で不快を知らしめるが、彼女には通じない。
「じゃあなんで被害者面してるの?」
鋭い視線で、訴えかけてくる。
「顧問に来るなって言われたとか、行けないからとか。なんで全部他のせいにしてるの?本当に今辛くて不安でどうしようもないのは、バスケ部のメンバーみんなでしょう!?」
瞬間息が詰まったのは、仲間の顔が浮かんだから。
「修斗が誰よりもバスケ上手いの知ってるよ、学校中の噂だよ!そんな絶対的エースの修斗がいない中でメンバーは試合しなきゃならないんだよ!?それがどんなに心許ないか、プレッシャーか、わからないの!?哲ちゃんだって修斗のせいで、最近全然元気ないよ!」
真那花が出場するはずだった体操部の大会には、個人戦と団体戦があった。彼女はおそらくそのふたつを欠場した。エースの真那花がいない中で行われた団体戦は、どうなったのだろう。
「真那花、お前もしかして……」
「メンバーにそんな思いさせといて、被害者ぶらないでよ!」
バスケは至極当然、チームプレー。俺が今行かないことは、俺だけの後悔だけでは済まされない。
シューズケースを真那花に差し出すと、彼女は受け取りながらも戸惑った。
「え……?」
俺はうーんと伸びをする。
「真那花サンキュ。なんか色々気付かされたわ。ちょっとこれ持って待ってて。今すぐ準備してくる」
俺の気変わりに、彼女はその名の通り、花みたく笑っていた。