哲也は毎日メールをくれた。電話もくれた。学校では俺の横でずっと言ってきた。

「バスケ来いよ。みんな待ってるぞ」って。

 俺はそんな彼に少しの歯を見せるだけで、首を縦には振らなかった。

 おい修斗、このまま辞めてしまうの?
 これは、心の隅から聞こえてきた。


 練習試合当日の朝。家には予告なしのインターホンが鳴り響く。

「修斗、修斗!起きなさい!」

 何度も鳴る耳障りな音に頭まで布団を被っていれば、それは母によって捲り上げられた。

「なんだよぉ、まだねみいよぉ……」

 窄めた目でスマートフォンを見やる。8時を過ぎた時刻に、トイレ掃除は誰がやったんだろう、なんて思う。

 布団の上でくねくねするだけの俺に拳固を1発落とした母は、頭の下の枕も奪い取った。怒声に近い声が飛ぶ。

「ちょっと修斗、彼女が来るなら来るって言ってよね!?」
「はぁ〜?彼女ぉ?そんなんいねえーし……」
「じゃあ誰よ!玄関にいるお団子の子は!」

 団子、団子、お団子ヘアの女の子。

「え」

 バネのように飛び起きた俺は、玄関へと駆けた。