キュッキュッ。キュッ。キュッキュ。

 体育館には、今日も俺の好きな音が響く。

「哲也パス!」
「おう!」

 大好きな仲間たちとの時間は限られていて、このメンバーで過ごせる時間もきっと儚い。

「勘助今のいいぞ!」
「おっしゃぁ!」

 だから俺の頭にあるのは常にこれだけ。崎蘭のみんなで全国大会に行く。普段はむかつく中川原を、そこで胴上げしてやるんだ。

「花奏!お前もうバテてんのかぁぁあ!」
「すみません!」
「もっとスタミナ養え!」

 中川原に背を向け舌打ちをする俺を見て、哲也は「朝型になれ」と笑っていた。

「やっぱやめたわ胴上げ」
「は?なんの話?」

 まぁそれは、全国へいってから決めようか。

「よし行くぞ!まずは1本!」
「おう!!」

 花奏修斗。17歳、高校2年生。本日も夢に向かって大地を蹴る。