あれだけ早く起きたのにも関わらず、俺等が駆け込んだのはいつもの電車の2本あと。車窓から、過ぎいくお馴染みの景色を眺め入る。

「哲也、南山中でバスケしてよかったな」
「おう」

 車窓に映る互いを見ながら、会話をした。

「南山中のバスケ部でよかったし、哲也と同じ歳に産まれてよかった」
「うん」

 表情を一切変えずに相槌だけをうつ哲也は今、何を思っているのだろうか。

「崎蘭もそうだよな。学武や真斗と逢えてよかったし、愛想ないけど中川原がコーチでよかった。それになんか俺」

 窓ではなく、ふと本物の哲也に視線を向けると彼もきょとんと俺を見た。

「なんだよ」
「やっぱいいや」
「は?」
「教えない」

 あははとしらを切る俺に、哲也は何度だって問いただしてきたが、これはさすがにしつこい恋人みたいだからやめておく。

「はぁーっ!ウッゼェ!俺も今度同じことやってやるからな、まじで気持ち悪いぞ!」
「はいはい」

 なんか俺、お前と一緒の大学行きたいかも。

 だなんてそんなこと、小っ恥ずかしくて言えるわけがない。


 青春の真っ只中。愛するものが多い俺等は不器用だ。
 スポーツを愛するが故に壁へぶつかって。友を想うが故に自分の気持ちを我慢して。初めての恋に戸惑って、今まで守ってくれた親を守りたくなって、けれど結局守られていて。
 俺等が不器用なのは全てそう、青い春の愛のせい。