「ありがとうございましたぁ!!」

 50対49。たった1点差、されど1点差。もしこれが公式試合ならば、慶明高校は崖の下、涙を流すだろう。

「楽しかったよ、花奏」

 リストバンドで額を拭いながら、横井が言った。

「お前まじですごいじゃん。花奏が最初っから出てたら、もっと点差ついてたんかな」
「いや、俺スタミナないから。最初っから出てたら後半の横井についてけねえよ」
「じゃあ次回は俺の勝ちだな。今度はちゃんとユニフォームもらえよ?」
「ははっ。わかったよ。楽しかったよ横井、ありがとう」
「今度は公式戦で会おう」

 彼と交わした握手で感じた熱いものを、また近いうちに味わいたいと思った。

 勘助が率いた1年2年ミックス対決は、崎蘭校に軍配が上がった。勘助は俺が部活を離れた間に、すごく上手になっていた。

 慶明校も観客も帰った体育館。カチャカチャとパイプ椅子を片付ける音が響く。

「修斗っ」

 倉庫へ向かう途中、哲也が俺の隣に駆け寄った。

「この後ちょっと俺の家で話せる?」
「あぁ、うん」

 彼の神妙な面持ちに、汗が一気に引いた。