47対49。ようやくここまで追いついた。しかし試合時間は残り僅か。

「花奏!あと20秒!」

 勝利を意識した中川原の目は血走っていた。

「最後の1本()めるぞ!」

 そう仲間を鼓舞するのは目の前の横井。ダムダムとボールをつく俺の隙を狙いつつ、ガードも堅い。

 ダム、ダム、ダム。

 何のアクションを起こしていないこの(かん)も、時間が時間だけに大喝采がわき上がる。バスケを始めた小学1年生から今まで何度も味わってきた緊張感。この先何年経っても噛みしめたい。
 汗ばむ手元の感触を確かめながら、俺はこんなことを思っていた。
 ああ、最後に哲也と暴れたいなって。

 コートの半分を過ぎたところでボールをキープしていると、哲也が自身のマークマン5番遠藤(えんどう)を突っぱねて、俺の名前を呼んできた。

「しゅ、修斗!」

 苦し紛れすぎる。残念だが、今の彼にはパスは出せない。

「大林!」

 哲也とは逆サイドにいる大林へ、投げつけるに近いかたちでボールを送った。俺は哲也の動きばかりを気にしていたから、反対側は敵の盲点だろうと思っての判断。しかしそれは、8番瀬河(せがわ)にカットされた。
 ヒヤッとした、奪われたと思った。俺の運が良かったのは、彼がそれを自分のものにはできずにコートの外へと出しただけだったこと。

 残り12秒。未来はどっちだ。