母の声援が聞こえたのは、1分ほどが経過してから。
「修斗その調子ー!」
ちょっとプッツンきた俺がエンドラインからひとり爆走し、シュートを決めた時だった。
チラッと応援席に目を向けると、バッシュの変化にいち早く気付いたらしき母が俺の足元を指さしていた。隣の父も怪訝な顔で、亀の如く首を出す。
プッツンに対し、プッツンで返してくるのは横井。
味方からのパスを受け取った彼は、放たれた矢の如く一直線、リング目掛けて飛んでいく。追いつけないと反射的に思ったが、それはどうやら勘違い。何故ならば俺は、元気だった。
皆が必死に闘っていた前半戦。俺は電車に乗ったり朝礼台に座っていただけだ。1か月間ほとんど走らせていなかった足は気持ち鈍い感じもするけれど、病は気からという言葉があるのと同じで、鈍さも気からだ。勘助のシューズはジャストフィット。俺の両足は喜んでいる。
「は、早いな、花奏」
ダダン!とボールのスピードを変えて、1度止まった横井が言った。俺はキュキュッとフロアを鳴らす。
「ちっさいバッシュと一緒に足枷も取れたからな。瞬足よ」
コートの中央から数歩進んだそんな位置。横井は俺と勝負がしたい、俺も横井と勝負がしたい。今俺が望んでいることをもし、彼も同じく望んでくれているとするならば。
キュッ。キュキュ、キュッ。
1対1。彼は自身で攻めてくる。
「修斗その調子ー!」
ちょっとプッツンきた俺がエンドラインからひとり爆走し、シュートを決めた時だった。
チラッと応援席に目を向けると、バッシュの変化にいち早く気付いたらしき母が俺の足元を指さしていた。隣の父も怪訝な顔で、亀の如く首を出す。
プッツンに対し、プッツンで返してくるのは横井。
味方からのパスを受け取った彼は、放たれた矢の如く一直線、リング目掛けて飛んでいく。追いつけないと反射的に思ったが、それはどうやら勘違い。何故ならば俺は、元気だった。
皆が必死に闘っていた前半戦。俺は電車に乗ったり朝礼台に座っていただけだ。1か月間ほとんど走らせていなかった足は気持ち鈍い感じもするけれど、病は気からという言葉があるのと同じで、鈍さも気からだ。勘助のシューズはジャストフィット。俺の両足は喜んでいる。
「は、早いな、花奏」
ダダン!とボールのスピードを変えて、1度止まった横井が言った。俺はキュキュッとフロアを鳴らす。
「ちっさいバッシュと一緒に足枷も取れたからな。瞬足よ」
コートの中央から数歩進んだそんな位置。横井は俺と勝負がしたい、俺も横井と勝負がしたい。今俺が望んでいることをもし、彼も同じく望んでくれているとするならば。
キュッ。キュキュ、キュッ。
1対1。彼は自身で攻めてくる。