奇跡が起こることはなく、光は失われ、次に目が覚めたとき永遠くんはいなかった。
いなかった、いた、ということすら感覚として危うく朧げに知っていて、涙を流して目を覚ましたラブホテルの一室で、覗き込む斜陽だけが私の孤独に寄り添っていたと思う。
孤独が人の形をして背中を丸めていたらそれは私だったかもしれない。危うく光のない、取るに足らない素朴で有り触れた人生の断片に、それでも確信があった。光という確信。誇りという存在。誰かの心を焦がした。この身が確かに。
「なあ、目ぇ見えへんの?」
光を失くした瞳で世界を感覚でなぞっていると、どこからともなく声がした。ここは東京。関東圏なのに、関西弁のその子どもの声は私の耳を撫で、公園のベンチに座る私の隣に腰掛けて、確かに強く手を握った。
「じゃあ、ぜんぶ解説したるわ」
「え?」
「あそこの砂場に男の子がおってな。そんでそこの隣にお母さんがおるねん。ほんで…」
手を握り、一つ一つ見えない世界を言葉で伝えてくれる、その手のひらの熱があの日抱きしめて消えた彼の体温と似ていて、涙があふれる。
その少年の名札に刻まれた「永遠」を、朝の光がやさしく照らしているのを、彼が名乗るまで私はまだ知らないままだ。