放課後。おたすけ部改め雑用引受部は、生徒会から「中庭の雪かきをしてほしい」と雑用を頼まれていた。



「うさ吉なめんなよ? こんなんすぐ雪玉に変わるし」
「雪玉かぁ」
「壱弥って雪触れねーんだっけ」
「うん。でも冷たいとかはわかるよ。空気っていうか、風は感じるから」
「ふうん」
「わ、言った傍から投げないでよ。うさ吉可哀想」



作ったばかりの雪ウサギ、通称うさ吉を一瞬でつぶして雪玉にした茅人が、壱弥に向かってそれを投げた。壱弥の身体をすり抜けたうさ吉が地面に落ちる。

けれど、壱弥が言ったように幽体に固形物は効かないらしい。「つめたい」とけたけた笑う壱弥めがけて、茅人は「ざまあ」と言いながら素手ですくった雪を舞わせていた。小学生である。



「ふたりとも、遊んでないでちゃんと雪かきしてよ」

「おい避けんな壱弥、当たれ!いけ!うさ吉!」
「ヤダ、寒い」
「俺だってさみーよ素手だぞバカがよ」
「うん。自虐だぁ」
「おま……っのやろぉ!」



……ダメだ。雪合戦に夢中のふたりは私の話なんてこれっぽっちも聞いていない。


本来、中庭を含む校内の雪かきは教員及び用務員が行うものである。昨年は積雪が少なかったことと、倉科前会長を筆頭に生徒会が協力していたようで、おたすけ部に回ってくることはなかったのだ。

百鬼会長曰く、倉科会長は雪合戦がしたいがために引き受けていたとのこと。茅人と仲良く話している理由もよくわかる。

しかしながら今年のおたすけ部は生徒会お墨付き(という名の百鬼会長の監視下に置かれているだけ)ということもあり、今に至る。