「ねぇ、こういうのってさぁ、どっかでチェックして合図送ることとか出来ないのかな」
「あるかもしれないけど、自分で気をつけて撮ることを意識してた方が、いいと思うよ」
「あ、そうか」
「あとで編集の時に加工もできるし」
「そっか! 圭吾、さすがだね」
「舞香も、もう出来るでしょ」
「めっちゃ時間かかるけどねー」
何気ない会話に何気ないやりとり。
そう、これが俺の望む正しい日常だ。
「だけどコレ、体育館で撮影するのと、本番の公会堂でやるのとは、随分雰囲気違うよね」
「だろうね、三脚置ける位置とかも違うだろうし。舞台下で撮影するのとか、許可ってもらった?」
俺は真っ黒な画面に浮かぶ、『参加中』の文字に向かって話しかける。
この向こうには間違いなく彼女がいるのに、姿だけが見えない。
「そっか。それも確認しとかないとね」
動画編集と撮影方法の打ち合わせ。
それに合わせた台本のチェック。
それら全てが終わったころには、すっかり遅い時間になっていた。
「あぁ、もう寝ないと。明日は圭吾、来なくてもいいよ。学校も休みだし。山本くんにはこっちから伝えておいたから」
「……。え? だって、大丈夫なの? 困ってるんじゃないの?」
真っ暗な画面のままの彼女は言う。
いまの俺には、これでしかつながれないのに。
「今日ね、部長に怒られちゃった。自分の写真展の方の撮影もあるんでしょ? いつまで迷惑かけてんだって。大会前にはモデルの撮影、終わらせておくべきだったって。当日だって手伝わせちゃうわけだし……」
「いや。それは、いまは忙しいから。OKしたのは俺だし、実際コンクールにも間に合うから……」
パンッと、両方の手の平を打ち合わせるような、そんな音だけが聞こえた。
「ゴメン。大会が終わったら、すぐにモデルするから。それまで待ってて!」
「……。うん。分かった……」
「ゴメンね。付き合い長引かせちゃって。ありがとう。おかげでコツがつかめたよ。本番の動画編集は、できるだけ自分でやってみるね」
「頑張って」
「じゃ、おやすみ」
プツリと通信は切れた。
突然静かになった画面に、耳のイヤホンを外す。
そっか、そうだよな。
俺は別に、関係ない人だもんね。
結局、ハクとの話しも出てこないままだ。
早く繋がりを切りたいのは、俺の方なのに。
明日はちゃんと、自分の撮影に集中しよう。
久しぶりの自分のための時間だ。
パソコンの電源を落とし、部屋の明かりを消す。
ベッドに転がり込んだ。
そうだ。
俺には他にすることが、沢山あるんだから。
「あるかもしれないけど、自分で気をつけて撮ることを意識してた方が、いいと思うよ」
「あ、そうか」
「あとで編集の時に加工もできるし」
「そっか! 圭吾、さすがだね」
「舞香も、もう出来るでしょ」
「めっちゃ時間かかるけどねー」
何気ない会話に何気ないやりとり。
そう、これが俺の望む正しい日常だ。
「だけどコレ、体育館で撮影するのと、本番の公会堂でやるのとは、随分雰囲気違うよね」
「だろうね、三脚置ける位置とかも違うだろうし。舞台下で撮影するのとか、許可ってもらった?」
俺は真っ黒な画面に浮かぶ、『参加中』の文字に向かって話しかける。
この向こうには間違いなく彼女がいるのに、姿だけが見えない。
「そっか。それも確認しとかないとね」
動画編集と撮影方法の打ち合わせ。
それに合わせた台本のチェック。
それら全てが終わったころには、すっかり遅い時間になっていた。
「あぁ、もう寝ないと。明日は圭吾、来なくてもいいよ。学校も休みだし。山本くんにはこっちから伝えておいたから」
「……。え? だって、大丈夫なの? 困ってるんじゃないの?」
真っ暗な画面のままの彼女は言う。
いまの俺には、これでしかつながれないのに。
「今日ね、部長に怒られちゃった。自分の写真展の方の撮影もあるんでしょ? いつまで迷惑かけてんだって。大会前にはモデルの撮影、終わらせておくべきだったって。当日だって手伝わせちゃうわけだし……」
「いや。それは、いまは忙しいから。OKしたのは俺だし、実際コンクールにも間に合うから……」
パンッと、両方の手の平を打ち合わせるような、そんな音だけが聞こえた。
「ゴメン。大会が終わったら、すぐにモデルするから。それまで待ってて!」
「……。うん。分かった……」
「ゴメンね。付き合い長引かせちゃって。ありがとう。おかげでコツがつかめたよ。本番の動画編集は、できるだけ自分でやってみるね」
「頑張って」
「じゃ、おやすみ」
プツリと通信は切れた。
突然静かになった画面に、耳のイヤホンを外す。
そっか、そうだよな。
俺は別に、関係ない人だもんね。
結局、ハクとの話しも出てこないままだ。
早く繋がりを切りたいのは、俺の方なのに。
明日はちゃんと、自分の撮影に集中しよう。
久しぶりの自分のための時間だ。
パソコンの電源を落とし、部屋の明かりを消す。
ベッドに転がり込んだ。
そうだ。
俺には他にすることが、沢山あるんだから。