「アレが宝玉を手に入れたら、間違いなく俺を引きずりだすだろう。再会したい気持ちは分かるが、それではアレも罪を犯すことになってしまう」

「……。刑期は、長いの?」

 外からの風が、彼の前髪を揺らした。

エアコンの冷気と生ぬるい外気とが、混ざり合うのが分かる。

「長いね。5千年だ。もう2千年は過ぎたか? だがまだ、半分も終わってない」

「なにしたの。なにをやったら、そんな罰を受けるんだよ」

「はは。それを話しても、人の子には分かるまい」

 なんだよそれ。

涼しげに言ってのけるその姿は、俺の知っている荒木さんと何も変わらない。

「正体を現したことで、封印は解かれた。アレも気づいたはずだ。あまり時間はない。俺はもう一度自分を閉じる。より強力に、もっと深くだ。この話しを記憶に残すのは、お前しかいない。どうかアレが自ら罪を犯す前に、天上へ戻してやってくれ」

「協力するなんて、一言も言ってないけど」

「人の子の命は短い。あまりにも短すぎて、目が回りそうだ。どうせ俺もお前もすぐに死ぬ。好きにすればいいさ」

 教室の扉が開く。

驚いて振り返ると、息を切らした舞香が立っていた。

「何があった!」

「な、なにって……」

 俺は荒木さんを振り返る。

彼はぽかんとしたまま、彼女を見ていた。

「ここに誰が来た!」

 コレは舞香じゃない。ハクだ。