「で、舞香の使命はどうなったの? ハクから言われた課題があったでしょ」
俺はつい頬杖ついて、ため息をつく。
「そんなことも知らないで、簡単に希先輩も仲間入りだーとか言えるの?」
舞香が俺を振り返った。
目が合ってしまって、逃げるように視線を外す。
「え、課題? 課題ってなに?」
乗り気の希先輩に、舞香は説明を始めた。
1,200年前、天から落とされた宝玉の行方を捜していることを……。
「う~ん……。郷土資料館とかは?」
「郷土資料館? そんなのがあるんですか? 地元の図書館に行って、そこに置いてある郷土史は調べてみたんですけど、池のことだけってのは、なかなか載ってなくて……」
「あら、それで二人で調べ物とかしたりしてたの?」
希先輩は、ニヤリと笑ってこっちを見る。
「あ、その……。圭吾は……」
「誘われてないから」
そう。
俺は、誘われていない。
「誘われてないから、手伝ってない」
「あぁ、そうだったんだ……」
希先輩が俺を見下ろす。
俺はまた視線をそらす。
「私はちゃんと手伝うから」
「ありがとうございます」
ほらね、やっぱり俺は誘われない。
いらない人間なんだったら、邪魔にならないようにしなければいけない。
「じゃ、先に帰りますね」
通学用のリュックを肩にかける。
「お疲れさま」
「またね」
なにが『お疲れさま』だ。『またね』だ。
閉めた扉の向こうからは、もう何の声も、物音も聞こえなくて、どうして希先輩はこんなタイミングで、ノックもせずここを開けたのかと思う。
そうじゃなかったら、俺はそのまま彼女と話しをしていて、ハクのこともバレなくて、普通に……。
いつも遅れてやってくるバスは、やっぱり遅れてやって来て、俺はいつものようにイライラしながら、それに乗り込む。
少し下校時間が早まったせいで、今日は自分と同じ制服の群れで、あふれかえってはいなかった。
ようやく息を吐き出す。
まぁいいよ。
あんなのに関わったって、時間の無駄だ。
帰って宿題しよう。
あんな意味の分かんない連中と違って、人生は短いんだ。
そもそも自己責任だろ。
なくしたものが見つからないとか。
それを人任せになんてしないで、自分でなんとかしろよ。
自分に出来ないことを、他人に押しつけるな。
悪いのは全部自分だろ。
だったらちゃんと、自己完結しろよ。
そう考えると、急に気が楽になって、渋滞のなか動かないバスに揺られているのも、楽しくなってきた。
家に帰ったら手を洗ってうがいをして、ご飯食べたら風呂入って、宿題をしよう。
それが何よりも、平和で幸福な証なんだから。
俺はつい頬杖ついて、ため息をつく。
「そんなことも知らないで、簡単に希先輩も仲間入りだーとか言えるの?」
舞香が俺を振り返った。
目が合ってしまって、逃げるように視線を外す。
「え、課題? 課題ってなに?」
乗り気の希先輩に、舞香は説明を始めた。
1,200年前、天から落とされた宝玉の行方を捜していることを……。
「う~ん……。郷土資料館とかは?」
「郷土資料館? そんなのがあるんですか? 地元の図書館に行って、そこに置いてある郷土史は調べてみたんですけど、池のことだけってのは、なかなか載ってなくて……」
「あら、それで二人で調べ物とかしたりしてたの?」
希先輩は、ニヤリと笑ってこっちを見る。
「あ、その……。圭吾は……」
「誘われてないから」
そう。
俺は、誘われていない。
「誘われてないから、手伝ってない」
「あぁ、そうだったんだ……」
希先輩が俺を見下ろす。
俺はまた視線をそらす。
「私はちゃんと手伝うから」
「ありがとうございます」
ほらね、やっぱり俺は誘われない。
いらない人間なんだったら、邪魔にならないようにしなければいけない。
「じゃ、先に帰りますね」
通学用のリュックを肩にかける。
「お疲れさま」
「またね」
なにが『お疲れさま』だ。『またね』だ。
閉めた扉の向こうからは、もう何の声も、物音も聞こえなくて、どうして希先輩はこんなタイミングで、ノックもせずここを開けたのかと思う。
そうじゃなかったら、俺はそのまま彼女と話しをしていて、ハクのこともバレなくて、普通に……。
いつも遅れてやってくるバスは、やっぱり遅れてやって来て、俺はいつものようにイライラしながら、それに乗り込む。
少し下校時間が早まったせいで、今日は自分と同じ制服の群れで、あふれかえってはいなかった。
ようやく息を吐き出す。
まぁいいよ。
あんなのに関わったって、時間の無駄だ。
帰って宿題しよう。
あんな意味の分かんない連中と違って、人生は短いんだ。
そもそも自己責任だろ。
なくしたものが見つからないとか。
それを人任せになんてしないで、自分でなんとかしろよ。
自分に出来ないことを、他人に押しつけるな。
悪いのは全部自分だろ。
だったらちゃんと、自己完結しろよ。
そう考えると、急に気が楽になって、渋滞のなか動かないバスに揺られているのも、楽しくなってきた。
家に帰ったら手を洗ってうがいをして、ご飯食べたら風呂入って、宿題をしよう。
それが何よりも、平和で幸福な証なんだから。