こうやって見ている分には、彼女は何者でもなく普通の女の子に見えた。
自分自身が乗っ取られてるとか、そういう自覚はあるのかな。
それとも同意はあった?
だけど、乗っ取られた瞬間をみてしまった俺としては、少なくとも乗っ取られることに対して、同意はなかったように思う。
まずはそこを確認してみたいけど、それをどうやって聞きだそうか……。
彼女自身は、あのバケモノの正体を知っているのかな……。
写真部と違って、演劇部は人数が多い。
やっている作業もそれぞれだ。
舞香はスマホを動画撮影設定にしたまま、台本チェックをしている部長を下から撮ってみたり、大道具チームの作業風景を、インタビューを交えながら撮影していた。
そんな彼女に向かって、俺はなんとなくシャッターを切る。
きっと彼女には気づかれていないから大丈夫。
俺はその一枚を撮っただけで、なんとなくここには満足してしまった。
空に軽々と浮かぶ大きな鳥を見つけて、それを収める。
きっとあんな風に空を飛べたら、気持ちいいんだろうな。
演劇部員たちの賑やかな活動が続いているその場所を、俺はそっと離れた。
水たまりみたいな、小さな池のほとりに立つ。
水面にアメンボが浮かんでいるのを見つけて、また一枚。
俺はこの場所が好きだった。
蚊が湧くとかいって他の皆は嫌がるけど、実際にはそうでもない。
池の周囲は整備された芝生が取り囲み、その向こうには原生林がそのまま残っている。
近所の猫が顔を出すこともあって、近寄っては来てくれないけど、写真は撮らせてくれる。
「舞香の写真はもういいの?」
ふいに声をかけられて、俺は渋々と振り返る。
荒木さんだ。
「せっかくのチャンスを無駄にするなんて、もったいない」
「なんでこっちに来たんですか」
「いや、キミが抜け出したから。何かあるのかなーと思って」
その端正な顔が、ふっと微笑んだ。
横顔を向け、彼の流れた視線の先は、小さな池を捕らえていた。
「この池は、昔はもっと大きくてね。深さもずっとあった。深い森の山の奥で、こんな人里迫る賑やかな場所ではなかったんだ」
今は芝生の広がるだけの場所に、両腕を広げる。
自分自身が乗っ取られてるとか、そういう自覚はあるのかな。
それとも同意はあった?
だけど、乗っ取られた瞬間をみてしまった俺としては、少なくとも乗っ取られることに対して、同意はなかったように思う。
まずはそこを確認してみたいけど、それをどうやって聞きだそうか……。
彼女自身は、あのバケモノの正体を知っているのかな……。
写真部と違って、演劇部は人数が多い。
やっている作業もそれぞれだ。
舞香はスマホを動画撮影設定にしたまま、台本チェックをしている部長を下から撮ってみたり、大道具チームの作業風景を、インタビューを交えながら撮影していた。
そんな彼女に向かって、俺はなんとなくシャッターを切る。
きっと彼女には気づかれていないから大丈夫。
俺はその一枚を撮っただけで、なんとなくここには満足してしまった。
空に軽々と浮かぶ大きな鳥を見つけて、それを収める。
きっとあんな風に空を飛べたら、気持ちいいんだろうな。
演劇部員たちの賑やかな活動が続いているその場所を、俺はそっと離れた。
水たまりみたいな、小さな池のほとりに立つ。
水面にアメンボが浮かんでいるのを見つけて、また一枚。
俺はこの場所が好きだった。
蚊が湧くとかいって他の皆は嫌がるけど、実際にはそうでもない。
池の周囲は整備された芝生が取り囲み、その向こうには原生林がそのまま残っている。
近所の猫が顔を出すこともあって、近寄っては来てくれないけど、写真は撮らせてくれる。
「舞香の写真はもういいの?」
ふいに声をかけられて、俺は渋々と振り返る。
荒木さんだ。
「せっかくのチャンスを無駄にするなんて、もったいない」
「なんでこっちに来たんですか」
「いや、キミが抜け出したから。何かあるのかなーと思って」
その端正な顔が、ふっと微笑んだ。
横顔を向け、彼の流れた視線の先は、小さな池を捕らえていた。
「この池は、昔はもっと大きくてね。深さもずっとあった。深い森の山の奥で、こんな人里迫る賑やかな場所ではなかったんだ」
今は芝生の広がるだけの場所に、両腕を広げる。